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電験3種電力問題 H21年 問9

電力H21年
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問題

電力系統における直流送電について交流送電と比較した次の記述のうち、誤っているのはどれか?

(1)直流送電線の送・受電端でそれぞれ交流ー直流変換装置が必要であるが、交流送電のような安定度問題がないため、長距離・大容量送電に有利な場合が多い。

(2)直流部分では交流のような無効電力の問題はなく、また、誘電体損がないので電力損失が少ない。そのため、海底ケーブルなど長距離の電力ケーブルの使用に向いている。

(3)系統の短絡容量を増加させないで交流系統間の連携が可能であり、また、異周波数系統間連携も可能である。

(4)直流電流では電流零点がないため、大電流の遮断が難しい。また、絶縁については、公称電圧値が同じであれば、一般に交流電圧より大きな絶縁距離が必要となる場合が多い。

(5)交流ー直流電力変換装置から発生する高調波・高周波による障害への対策が必要である。また、漏れ電流による地中埋設物の電食対策も必要である。

基礎知識

直流送電とは、直流で送電することです。(読んで字のごとく)

発電は三相交流で発電され、負荷も三相又は単相交流で送られています。

三相交流で発電された電源を交流ー直流変換器(コンバータ)で直流に変換し、

それを、負荷側で直流―交流変換器(インバータ)で交流に変換して使用する。

こんなに面倒なことをするには、利点がなければやりませんよね。

まずは、利点から見ていきましょう。

1、直流には、無効電力がない。(有効電力しかない。)

電圧に対して電流が遅れることも進むこともできません。(電圧がサイン曲線ではない。)

2、電線には充電電流が存在するが、直流の場合は一旦電荷が溜まると以降の影響がない。

3、直流には表皮効果がないので、電線の許容電流まで電流を流せる。

4、三相交流の場合は電線が3本必要だが、直流の場合は2本で良いので経済的。

(電蝕や電磁障害を考えず、帰路を大地にすると、1本でも良い。)

5、インバータで交流に変換するときに周波数を自由に選べるので、異周波数連係ができる。

6、交流の公称電圧は実効値のことです。100Vの交流は実効値100Vですから、最大値は $\sqrt{2}$ 倍の141Vになります。

絶縁を考える場合は、最大値について考えなければなりません。交流の場合は、公称電圧の $\sqrt{2}$ 倍です。

直流の場合は公称電圧が実効値であり最大値です。よって、直流の場合は、絶縁を考える上で公称電圧について考えれば良いことになります。

次に、欠点についてです。

1、まずは、発電も負荷も交流です。よって、交流を直流に変換してから送電し、直流を交流に変換してから負荷に送ることになります。

ということは、交流ー直流変換器と直流ー交流変換器を必要とするので、コストがかかります。

2、直流には電流0〔A〕点がないので、大電流を遮断する遮断器が必要となります。

3、直流ー交流変換器は、サイリスタを使用する変換器が主流ですので、高調波が発生します。よって、高調波対策が必要になります。

(アイキャッチ画像は、サイリスタ使用インバータのつもりです。)

4、負荷側では、昼間は遅れ無効電力を含み、夜間では進み無効電力を含むことがあります。

ただ、直流ー交流変換器で作られた交流電源には無効電力が含まれていません。

負荷側の無効電力を調整するために、調相装置(同機調相機、分路リアクトル、電力用コンデンサ等)が必要になります。

主には、こんなところです。

解答

正解は、(4)が誤りです。

(1)交流送電における安定度の問題とは、交流発電では同期発電機が用いられていて、その発電機が同期外れにならないように制御しなければなりません。

ここに、無効電力が大きく関わってきます。

直流送電では、無効電力がないので、安定度の問題がありません。

変換器が必要なのは、基礎知識に書きました。

また、「直流送電は長距離・大容量送電に有利な場合が多い」と言われています。

(2)誘電体とは、誘電率を持った物体としましょう。

誘電率は、コイルの電荷をどれだけ貯められるかの指数として出てきます。

誘電体に、直流電源を加えると電荷が一定量貯まると終わりですが、交流電源を加えると「+」の電荷と「-」の電荷の間を行ったり来たりします。

この電荷の変化が、エネルギーを消費し、熱を作ります。

これが、誘電体損です。

誘電体には空気や電線の被覆も含まれますから、電線とその絶縁物からなる被覆の間にも誘電体損が発生します。

また、基礎知識にも書きましたが、直流送電には無効電力の問題はありません。

海底ケーブルでの送電にも使われています。

(3)短絡容量とは、3相短絡事故が起きた時に、事故点に流れ込む電力のことです。

送電系統が大きくなれば、短絡容量も大きくなります。

送電系統の間に直流送電を挟むと、送電系統が直流送電の両端で分かれます。

よって、送電系統が小さくなり、その分、短絡容量は小さくなります。

また、基礎知識で書いた通り、一度直流に変換してインバータで再度交流に変換しています。

その際に周波数を自由に選べるので、異周波数の連携も可能です。

(4)基礎知識に書いた通り、直流なので電流零点がないので遮断には大電流を遮断する必要があります。

公称電圧が同じであれば、交流電圧の最大値は $\sqrt{2}$ 倍になりますが、直流電圧の場合は公称電圧が最大値です。

よって、直流の方が絶縁距離を小さくすることができます。(ここが間違いです。)

(5)これも、基礎知識に書きましたが、直流ー交流変換器は、サイリスタを使用する変換器が主流ですので、高調波が発生します。

よって、高調波対策が必要になります。

また、基礎知識には書きませんでしたが、直流送電には、漏れ電流による電食の問題が発生します。

まとめ

直流送電の問題です。

直流送電の構成自体は簡単なものです。

ただ、問題文に出てくる言葉に難解なものがあります。

私は、この言葉を覚えるのが苦手なものですから、たくさん読んで、調べて、イメージを頭の中に作らないと覚えられません。

皆さんも、たくさんの問題文を読んで、調べてください。

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