問題
次のa~dは配電設備や屋内設備における特徴に関する記述で、誤っているものが二つある。それらの組み合わせは次のうちどれか?
a.配電用変電所において、過電流及び地絡保護のために設置されているものは、継電器、遮断器及び断路器である。
b.高圧配電線は大部分、中性点が非接地方式の放射状系統が多い。そのため経済的で簡便な保護方式が適用できる。
c.架空低圧引込線には引込用ビニル絶縁電線(DV電線)が用いられ、地絡保護を主目的にヒューズが取り付けられてある。
d.低圧受電設備の地絡保護装置として、電炉の零相電流を検出し遮断する漏電遮断器が一般的に取り付けられている。
(1) aとb
(2) aとc
(3) bとc
(4) bとd
(5) cとd
基礎知識
まずは、言葉を抑えておきましょう。
上の写真は、漏電リレーです。
継電器=又の名を「リレー」、例えば過電圧継電器(Over Voltage Relay)、不足電圧継電器(Under Voltage Relay)、過電流継電器(OCR (Over Current Relay))などがあります。
リレーなので、ある信号(過電圧、不足電圧、過電流など)を受けて電路を遮断する働きをします。
上の写真は、VCBです。
遮断器=又の名を「サーキット ブレーカー」単に「ブレーカー」。サーキットとは回路のこと、ブレーカーとは遮断器のことです。
電気を使い過ぎるとブレーカーが落ちることがありますよね。一般的に既定の電流値以上の電流が流れるとトリップする機能を持っています。
また、電流が流れている回路を遮断するので、アーク放電を速やかに消滅させる装置(消弧装置)が付いています。
上の写真は、ディスコンです。
断路器=通称「DS」「ディスコン」と呼ばれているものです。
断路器は遮断器と違い消弧能力がないので、電流が流れている回路を開閉することはできません。
高電圧を受電している場合、受電設備内の受電側に一番近い所に設置されていて、ディスコン(断路器)を切ることにより確実に受電設備内を無電圧にすることがでる安全装置です。
余談ですが、電力会社からの電力は、まず初めに区分開閉器(PAS)で受けます。ここからが受電設備設置者の持ち物になり、責任分界点の最初の機器になります。
ディスコンを開放するときは、このPASを切って、無電圧を確認してからディスコンを開放します。アーク放電を避けるためです。
ヒューズ=定格電流以上の電流が流れると、中の合金線が溶断するもの。
昔は、家庭用の分電盤の中にも使われていましたか、最近はブレーカーに変わっています。
ヒューズは、一定以上の電流が流れると合金線の部分が溶断するように作られているので、誤動作が少なく安全です。
代わりに、切れたヒューズは交換が必要ですので、面倒でもあります。
短絡=2相又は3相の電線が負荷を通さずに接触すること。「ショート」とも言います。
2相又は3相間に、決まって大電流が流れます。
地絡=1相が大地と接触すること。(大地に限らず、本来電気が流れない所と1相が接触す場合もあります。)
直流送電で大地を帰路とする方法があるように、大地はそこそこ電気を通します。
よって、中性点接地の方法により流れる電流は変わります。
中性点接地が、直接接地の場合は短絡電流と同等の電流が流れますし、非接地の場合は電流がほとんど流れません。
地絡地点の大地が電圧を持つので、感電の危険があります。
漏電=地絡ほどではないが、本来電気が流れない所と1相が接触している状態。
地絡は低抵抗で大地と接触しているのに対して、漏電は高抵抗で大地に接触しているイメージです。
漏電している部分に触ると感電します。漏電と言えば感電です。
零相電流=3相回路において各相に共通して同相で流れる電流のこと。(難しいのでこの定義は無視してください。)
一般の平衡交流回路では流れない電流ですが、地絡や漏電があると平衡状態が崩れて流れます。
解答
誤っているものの組み合わせは(2)です。
a.過電流及び地絡保護のために設置しているのは継電器及び遮断器であり、回路が通電状態で開閉できない断路器は保護装置として使用できない。
b.高圧配電線(7000V以下、一般的に6600V)は、中性点非接地方式が使用されている。
(ちなみに、高圧より電圧が高くなると抵抗接地やリアクトル接地が使われ、超高圧になると直接接地が使われる。)
放射状系統とは、発電所から木の枝状に分岐して各需要家に送電する方式です。
系統構成が単純で、事故時の保護も直近の変電所で切るので簡単になります。
保護方式も、簡便な方法で良いことになります。
(ただし、その変電所にぶら下がっている需要家も停電するので、信頼度は悪いです。)
放射状系統と対になるのが、ループ状系統です。
複数の変電所からループを組んで受電しているので、一つの変電所がダウンしても別の変電所から受電できるため信頼度はたかいです。
ただし、潮流調整や、保護装置が複雑になります。
c.架空低圧引込線には、引込用ビニル絶縁電線(DV電線)が使われています。(問題の通りです。)
ただし、ヒューズは過電流に反応する装置です。中性点非接地方式の地絡事故では地絡電流がほとんど流れないので、ヒューズは反応しません。
よって、ヒューズは過電流及び短絡保護用です。
d.地絡保護には、零相変流器を使って零相電流を検出しています。その零相電流の大きさにより、漏電遮断器が働きます。
まとめ
この問題は、電気関係に携わっていない人には、かなりの難問ではないかと思います。
言葉の意味(機器の性質と性能や、地絡短絡の事故形態等)を正確に理解していないと正解にたどり着けません。
この手の問題は、問題文を読んで、1分考えて、答えが出ないときはパスしましょう。
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