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電験3種電力問題 H21年 問12

電力H21年
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問題

配電で使われる変圧器に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか?

下図を参考にして答えよ。

(1)柱上に設置される変圧器の容量は、50〔KVA〕以下の比較的小型のものが多い。

(2)柱上に設置される三相3線式の変圧器は、一般的に同一容量の単相変圧器のV結線を採用しており、出力はΔ結線の $\cfrac{1}{\sqrt{3}}$ 倍ととなる。

また、V結線変圧器の利用率は $\cfrac{\sqrt{3}}{2}$ となる。

(3)三相4線式(V結線)の変圧器容量の選定は、単相と三相の負荷割合やその負荷曲線及び電力損失を考慮して決定するので、同一容量の単相変圧器を組み合わせることが多い。

(4)配電線路の運用状態や設備実態を把握するため、変圧器二次側の電圧、電流及び接地抵抗の測定を実施している。

(5)地上設置形の変圧器は、開閉器、保護装置を内蔵し金属製のケースに納めたもので、地中配電線供給エリアで使用される。

基礎知識

柱上変圧器は、6600〔V〕の高圧で受電し、200/100〔V〕に変換して、各家庭に供給するための変圧器です。

名前からも分かるように、電信柱の上に置かれています。よって、大きな変圧器は置けません。

また、バランスを取るために、単相変圧器2個を両サイドに配置しています。

単相変圧器2個なので、V結線となります。

三相3線式の場合は、三相動力負荷がつながっています。

この場合の変圧器は、同じ要領の変圧器二つでV結線されています。

三相4線式の場合は、三相動力負荷と単相電灯負荷がつながっています。

左の変圧器は、三相動力負荷だけにつながっているので、専用変圧器と呼ばれています。

右の変圧器は、三相動力負荷と単相電灯負荷の両方につながっているので、共用変圧器と呼ばれています。

共用変圧器の方が、専用変圧器よりも容量の大きな変圧器になります。

共用変圧器は、三相動力負荷と単相電灯負荷の両方に電力を送っているので当然ですよね。

専用変圧器と共用変圧器の容量が違うので、異容量V結線とも呼ばれています。

まずは、Δ結線の変圧器の出力は、$\sqrt{3}\ V\ I$ で表すことができます。

ここで、$V$ は線間電圧、$I$ は線電流です。

図のように、変圧器を $T_1$、 $T_2$、 $T_3$ とすると、a-b間の線間電圧 $V_{ab}$ は $T_1$ の変圧器の両端の電圧になります。

同様に、各線間電圧は各変圧器の両端の電圧になります。

これを、$V\ =\ V_T$ と表すことにしましょう。

次に、a相の線電流 $I_a$ は、変圧器 $T_1$ と $T_3$ の電流 $I_{T1}$ と $I_{T3}$ のベクトル和になります。

電流の大きさだけを考えると、$I_a\ =\ \sqrt{3}\ I_{T1}$ と表すことができます。

またもやこれを、$I\ =\ \sqrt{3}\ I_T$ と表すことにしましょう。

Δ結線の出力を、$V_T$ と $I_T$ を使って表すと、

$\sqrt{3}\ V\ I\ =\ \sqrt{3}\ \times\ V_T\ \times\ \sqrt{3}\ I_T\ =\ 3\ V_T\ I_T$ となります。

利用率は、$\cfrac{出力}{変圧器3個の容量}$ ですから、$\cfrac{3\ V_T\ I_T}{3\ \times\ V_T\ I_T}\ =1$ となります。

次に、V結線の電圧を見てみましょう。

V結線の変圧器の出力も、$\sqrt{3}\ V\ I$ で表すことができます。

ここでも、$V$ は線間電圧、$I$ は線電流です。

図のように $V_{bc}$ は、変圧器 $T_1$ の両端の電圧になります。

これを、$V\ =\ V_T$ と表すことにしましょう。

次に、電流 $I_b$ は、変圧器 $T_1$ の電流と同じになります。

これを、$I\ =\ I_T$ と表すことにしましょう。

V結線の出力を、$V_T$ と $I_T$ を使って表すと、

$\sqrt{3}\ V\ I\ =\ \sqrt{3}\ \times\ V_T\ \times\ I_T\ =\ \sqrt{3}\ V_T\ I_T$ となります。

利用率は、$\cfrac{出力}{変圧器2個の容量}$ ですから、$\cfrac{\sqrt{3}\ V_T\ I_T}{2\ \times\ V_T\ I_T}\ =\ \cfrac{\sqrt{3}}{2}\ \fallingdotseq\ 0.866$ となります。

そして、V結線の出力はΔ結線の出力に比べ $\cfrac{\sqrt{3}\ V_T\ I_T}{3\ V_T\ I_T}\ =\ \cfrac{1}{\sqrt{3}}$ 倍ととなる。

解答

正解は、(3)が間違いです。

(1)柱上変圧器は、5、10、15、20、30、50、75〔KVA〕の小さい変圧器が用いられていて、50〔KVA〕以下の変圧器が多い。

(2)基礎知識に書きましたが、V結線変圧器の出力はΔ結線変圧器の出力の $\cfrac{1}{\sqrt{3}}$ 倍であり、V結線変圧器の利用率は $\cfrac{\sqrt{3}}{2}$ であり約86.6%です。

(3)三相4線式のV結線変圧器は、共用変圧器と専用変圧器の容量が違うので異容量V結線とも呼ばれています。

同一容量の単相変圧器の組み合わせではありません。

(4)送電の保安の観点からも、いかにも実施していそうなことです。

(5)地上設置形であるので、重量の制限が少なく、開閉器や保護装置も内蔵することができる。

また、架空配電線では柱上に変圧器を置かないと6600Vの高電圧に接触する危険があるが、地中配電線では地上設置形の変圧器が用いられています。

まとめ

(2)に出てくるΔ結線変圧器の出力、V結線変圧器の出力、Δ結線変圧器の利用率、V結線変圧器の利用率は、基礎知識の説明をよく読んでおいてください。

また、(3)の三相4線式(V結線)の変圧器の負荷の状態をイメージできれば、異容量V結線であることが分かると思います。

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