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電験3種理論問題 H21年 問8

理論H21年
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問題

図のように、$R=\sqrt{3}\omega L$ 〔Ω〕の抵抗、インダクタンス $L$ 〔H〕のコイル、スイッチSが各周波数 $\omega$ 〔rad/s〕の交流電圧 $\dot{E}$ 〔V〕の電源に接続されている。

スイッチSを開いているとき、コイルを流れる電流の大きさを $I_1$ 〔A〕、電源電圧に対する電流の位相差を $\theta_1$ 〔°〕とする。

また、スイッチSを閉じているとき、コイルに流れる電流の大きさを $I_2$ 〔A〕、電源電圧に対する電流の位相差を $\theta_2$ 〔°〕とする。

このとき、$\cfrac{I_1}{I_2}$ 及び $|\theta_1-\theta_2|$ 〔°〕の値として正しいものの組み合わせはどれか?

(1) $\cfrac{I_1}{I_2}=\cfrac{1}{2}$   $|\theta_1-\theta_2|=30$

(2) $\cfrac{I_1}{I_2}=\cfrac{1}{2}$   $|\theta_1-\theta_2|=60$

(3) $\cfrac{I_1}{I_2}=2$   $|\theta_1-\theta_2|=30$

(4) $\cfrac{I_1}{I_2}=2$   $|\theta_1-\theta_2|=60$

(5) $\cfrac{I_1}{I_2}=2$   $|\theta_1-\theta_2|=90$

この問で必要な公式

① $I=\cfrac{|\dot{E}|}{|\dot{Z}|}$

② $\dot{Z}=R+\Bigl(j\omega L-j\cfrac{1}{\omega C}\Bigr)$

解答

正解は(2)です。

スイッチSが「開」のときのインピーダンスZは?

公式②より、$\dot{Z}=R+j\omega L$ となります。

これを公式①に代入すると、

$\dot{I}_1=\cfrac{|\dot{E}|}{|\dot{Z}|}=\cfrac{|\dot{E}|}{R+j\omega L}$

$|\dot{E}|=E$ と表すこととし、また題意より、$R=\sqrt{3}\omega L$ なので、これを代入して、

$\dot{I}_1=\cfrac{E}{\sqrt{3}\omega L+j\omega L}$

分母を有理化して、

$\dot{I}_1=\cfrac{E(\sqrt{3}\omega L-j\omega L)}{(\sqrt{3}\omega L+j\omega L)(\sqrt{3}\omega L-j\omega L)}$

$=\cfrac{(E\omega L)(\sqrt{3}-j)}{3\omega^2 L^2+\omega^2 L^2}=\cfrac{(E\omega L)(\sqrt{3}-j)}{4\omega^2 L^2}$

$=\cfrac{E(\sqrt{3}-j)}{4\omega L}=\cfrac{\sqrt{3}E}{4\omega L}-\cfrac{jE}{4\omega L}$

$\dot{I}_1$ の大きさ $|\dot{I}_1|=I_1$ を求めます。

三平方の定理より、

$I_1=\sqrt{\left(\cfrac{\sqrt{3}E}{4\omega L}\right)^2+\left(\cfrac{E}{4\omega L}\right)^2}$

$=\sqrt{\cfrac{3E^2}{16\omega^2L^2}+\cfrac{E^2}{16\omega^2L^2}}=\sqrt{\cfrac{4E^2}{16\omega^2L^2}}$

$=\cfrac{2E}{4\omega L}=\cfrac{E}{2\omega L}$

となります。

$\theta_1$ を求めます。

$tan\theta_1=\cfrac{\mbox{虚数軸の値}}{\mbox{実数軸の値}}$ となりますよね。

数値を当てはめると、

$tan\theta_1=\cfrac{\cfrac{E}{4\omega L}}{\cfrac{\sqrt{3}E}{4\omega L}}=\cfrac{1}{\sqrt{3}}$

となります。

角度を求めるのに、$tan^{-1}$ を取ると、

$tan^{-1}\cfrac{1}{\sqrt{3}}=30^\circ$

(数式上この様に書きましたが、計算をするのではなく、上の図を描いて値を求めてください。)

となります。

次にスイッチSが「閉」のとき、電流はR側を流れないで全てスイッチ側を流れます。

よって、スイッチSが「閉」のときのインピーダンスZは、

$Z=j\omega L$ です。

これを公式①に代入すると、

$I_2=\cfrac{E}{\omega L}$

となります。

$\theta_2$ は、負荷が $\omega L$ だけなので、90°(遅れ)です。

問の、

$\cfrac{I_1}{I_2}=\cfrac{\cfrac{E}{2\omega L}}{\cfrac{E}{\omega L}}$

$=\cfrac{\cfrac{1}{2}}{1}=\cfrac{1}{2}$

であり、

$|\theta_1-\theta_2|=|30-90|=60$

となります。

解説

図から明らかなように、

$sin0^\circ=0$ 、 $sin30^\circ=\cfrac{1}{2}$ 

$sin45^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{2}}$ 、 $sin60^\circ=\cfrac{\sqrt{3}}{2}$

$sin90^\circ=1$

$cos0^\circ=1$ 、 $cos30^\circ=\cfrac{\sqrt{3}}{2}$

$cos45^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{2}}$ 、 $cos60^\circ=\cfrac{1}{2}$

$cos90^\circ=0$

$tan30^\circ=\cfrac{1}{\sqrt{3}}$ 、 $tan45^\circ=1$

$tan60^\circ=\sqrt{3}$

となります。

以上の $sin$ 、$cos$ 、$tan$ はよく覚えておきましょう。

関数電卓が使えない今は、これくらいしか出てきません。

また、公式① $I=\cfrac{|\dot{E}|}{|\dot{Z}|}$ の $|\dot{Z}|$ はインピーダンスZの大きさです。

三平方の定理 $a^2+b^2=c^2$ を使っています。

だから、公式② $\dot{Z}=R+\Bigl(j\omega L-j\cfrac{1}{\omega C}\Bigr)$ で求めたリアクタンスXの虚数表示 $j$ をあえて取っています。

虚数表示 $j$ があると、$a^2-b^2\neq c^2$ となり、定理に合いません。

間違える人も少ないと思いますが、一言。

また、スイッチSを「閉」とすると抵抗に電流が流れません。

電流は流れ易い方に流れるので、抵抗のないスイッチSに全て流れます。

抵抗Rは、無視して考えてください。

まとめ

30°、60°、90°の三角形の辺の比と、45°、45°、90°の三角形の辺の比は、覚えておきましょう。

「 $1:2:\sqrt{3}$ 」と「 $1:1:\sqrt{2}$ 」を穴の空くほど眺めましょう。

また、声に出して、呪文のように唱えてみましょう。

複素数の計算にも、慣れておいてください。

分母に虚数が含まれている場合は、分母の複素数の共役複素数を分母分子に掛けます。

(共役複素数とは、元の複素数の「 $j$ 」の前の符号を変えた複素数です。)

$a\pm jb$ が元の複素数ならば、$a\mp jb$ が共役複素数です。

これらを掛け合わせると、

$(a\pm jb)(a\mp jb)=a^2+b^2$ となり、分母の虚数 $j$ が消えます。

分母の虚数 $j$ が消えると、複素数を実数部と虚数部に分けることができますよね。

この問題の場合は、実数部が抵抗を流れる電流、虚数部がコイルを流れる電流となります。

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